Sゝゝ[エス]は、職人の高度な技術を活かして漆の美しさをより引き立たせ、
日本古来より生活のなかで使われてきた漆の魅力をあらためて提案しています。
また、鐵や硝子、紙などのさまざまな素材との組み合わせにも積極的に取り組んでいます。
漆
漆(漆器)とは
漆は「ウルシの木」を傷つけることでにじみ出てくる樹液を精製したもの。
日本の漆器の歴史は古く、北海道の垣ノ島遺跡から約9,000年前の漆を使用した副葬品が出土したことから、
縄文時代前期から漆工芸技術が存在していたと考えられています。
漆器は、酸やアルカリ、塩分、アルコールにも強く、耐水性、防腐性に優れていることから、丈夫で長持ち。
また、強い接着力があることから、陶磁器を修復する「金継ぎ」や、
染色の工程で染型を作る際など、古くから接着剤としても使われてきました。
漆工
漆器の製作は、全ての工程を一人で行う場合もありますが、
一般的に分業制をとっており、木地師、下地師、塗師、呂色師、蒔絵師、沈金師などの職人がいます。
工程は作り手によってさまざまですが、漆器の産地、福井県鯖江で、
その製作に従事する職人、漆工房錦壽の山岸さんに制作工程と大事にしている道具を伺いました。
木固め
木地に生漆(きうるし─漆液をろ過し、木の皮などの取り除いたもの)を塗ることで、
木地を安定させ上に塗る漆を定着しやすくします。室内で約一週間おき乾かします。
下地
木地を硬くし、漆独特の滑らかな質感を出すため、砥の粉(とのこ)、地の子(じのこ)を
生漆で混ぜ合わせたものを塗り下地を整えます。二週間かけて乾燥させ、その後研ぎます。
下塗り
第一段階の漆塗り作業。刷毛で漆を塗っていきます。
室(ムロ)と呼ばれる乾燥させる場所で一週間乾かし、その後表面を研いで整えます。
上塗り
第二段階の漆塗り作業。上塗漆を刷毛で塗ります。
室で一週間漆を乾かします。
研ぎ
砥石や炭などを使い表面を磨き整えます。
拭き漆(艶出し)
生漆を塗って拭き上げて仕上げます。この工程があることで丈夫になり自然な艶がでます。
道具
- Q : 大切にしている道具は何ですか?
- A : 下塗りと上塗りの工程に使用する“塗り刷毛”です。
この刷毛は人毛を束にして膠で固め、板に挟んだもの。
漆の肌を綺麗に塗り仕上げることができるため、下塗りや上塗りに欠かせない道具です。
山岸さんは刷毛目を立てるようにして使います。
使い込んで毛先が揃わなくなった際には、小刀で柄の板を削って毛を出し、毛先を切り揃えて再び使います。
親子代々受け継がれてきた刷毛を削る小刀もまた、大切な道具の一つです。
Sゝゝの漆製品
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nuri WASARA
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紙の器「WASARA」に漆を塗り仕上げた「nuri WASARA」シリーズです。鉄粉の酸化作用により黒変した漆を塗った「黒」、朱漆の上に飴色の透漆を重ねた「溜(ため)」、朱漆の上に黒漆を塗り重ね、さらにそれを研ぎ出した「曙(あけぼの)」の三種類の仕上げにて製作しました。
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漆の汁椀
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伝統的な唐草模様を描いた汁椀です。上塗りは刷毛目を残すように塗る「刷毛塗り」という技法で塗られています。また、その刷毛目の凹凸に滲むことなく、蒔絵師が繊細な模様を施しています。美しく仕上げるには使用する漆や筆選びも重要です。漆工芸の分業ならではの各専門職人の高い技術力を用いて製作しました。
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鐡の片口
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Sゝゝの鐡製品は、漆を焼付け下地とし、鉄漿液(はぐろえき─酢酸液に銅片を入れ一年以上放置したものに、お茶を煮出した液を合わせたもの)を塗っています。鉄独特の風合いを出すとともに、錆止めの役割も果たしています。片口は内側に弁柄漆、淡口朱漆、白漆の三種類の色漆を塗ることで、酒器として使いやすくし、艶やかに仕上げています。
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