Sゝゝ[エス]は日本各地の職人の方々とともに現代における「生活道具の創造」に取り組んでいます。
今回は急須製作を担う職人の製法と道具をご紹介いたします。

技法

急須を形造る基本パーツは本体・蓋・注ぎ口・把手の4点。
すべてのパーツは轆轤成型による“手引き”という技法により、手作業で行われます。
一般的な回転数より速い轆轤に粘土をかけ、手の濡らし具合を調整しながら、それぞれのパーツを成型します。

回転数が速い理由は、的確な形状が成型できることと、短い時間で量産ができるという利点です。
熟練の急須職人でなければ製作が難しい回転数で、それぞれ同じパーツを必要な数量分、続けて成型していきます。
手作業とは思えないほど、すべてのパーツが寸分の狂いなく、作り出されます。

Sゝゝ[エス]の急須は、茶葉の旨味の抽出を追求しており、
茶葉が均一的に湯に浸るよう切り立ち形であったり、極限に平たかったりなど特異な形状をしているため
一般的な急須の製作とは違う工夫と丁寧な手作業が必要とされます。

中世から続く古窯として、また急須の産地として名高い常滑の地で、
Sゝゝ[エス]の急須製作に従事する職人、伊藤成二さんに製作への想いと大切にしている道具を伺いました。

Sゝゝ[エス]の急須は一般的な丸みを帯びた急須と異なり
シンプルでかつエッジのきいた形状のため、ほんのわずかな指の当たり具合で、
製品のイメージが大きく変わってしまうので、細心の注意を払い製作に取り組んでいるとのこと。
試作を経て12年ですが、未だに製作の中での発見があり、工夫を重ねながら製作を愉しまれているそうです。

道具

伊藤さんが一番大切にしている道具はジュラルミンの羽釜です。
意外な答えでもあるこの羽釜は轆轤作業をする際、水桶として用いられます。
手を濡らすためでもあり、粘土で汚れた道具もこの羽釜で洗い流します。

轆轤成型をする際には、常にこの羽釜を側に置き、手に水気を補いながら作業します。
羽釜の縁は、手の水気を拭う時に大変使い勝手が良いそうです。

この羽釜は45年前、先代から譲り受けたもので、いつも伊藤さんの傍らにあります。
ほぼ毎日使い続けることで、手を拭う箇所が薄くなっていきました。
道具への愛着と熟練の歴史を感じさせる一品です。

Sゝゝ[エス]の急須

  • 一文字急須

    “一”の字のように蓋が平たく、寸胴形のシンプルな急須です。
    切り立った形状であるため、茶葉が均一的に湯に浸り茶の旨味を引き立てます。
    急須の産地として名高い愛知県常滑にて、熟練の職人により一つ一つ轆轤で引いて製作しています。「朱泥」、「黒陶」、「焼き〆」の三種をご用意しました。

  • 平急須

    広く平たい形状の玉露用急須です。
    玉露がゆっくりと均一に広がるよう、工夫し仕上げました。じっくりと茶葉が広がり玉露特有の甘みが引き立ちます。
    急須の産地として名高い愛知県常滑にて、熟練の職人により一つ一つ轆轤で引いて製作しています。「朱泥」、「黒陶」の二種をご用意しました。